生嶋語録の中でたぶん最も膾炙されたのがこの言葉。これはいわゆるネクラの人への応援メッセージである。自分自身でもそれなりに気に入っているのは、これが自分に向けて発せられた部分があるからだろう。リクルートという会社の、表面的なとてつもない明るさには、なかなかついていけない時代があった。
(中略)
TI型性格テストのENTPタイプ(外交的で前向き、出たとこ勝負タイプ)が圧倒的に多い社内にあって、筆者はほぼその反対のINFPタイプ。それでも、いやそれだからこそか、リクルートの明るさは何かまぶしいものを見るような高揚感もあった。時々あの「明るさ」の仲間に入りたいなという思い。踊る阿呆になってみたい希求。ネクラゆえの憧れ。
(中略)
暗い奴は暗く生きろ。語感も良し、意味もそのとおりストレートに受け止めてもらえばよいのではあるが、ひと言加えておこう。自己中心的、他人の痛みが見えない、己の世界だけに引きこもっている……これらを決して「暗い」とは言わない。
「暗い」とは。造物主への畏怖があり、従って己の卑小さを知りながらも高ぶる情念を持て余して、謙譲ということではなくとも、おのずから言葉少ないときをもつ……ということだろう。
『暗い奴は暗く生きろ』
- 著者
- 生嶋 誠士郎
- 出版社
- 新風舎/22世紀アート
- 出版年
- 2007年