経営戦略というもっともらしい言葉がある。その戦略を立てるために、膨大なコストと時間を投入したりする。コンサルタント会社などに支払われる大半の金もこれだ。(中略)
ここでさらに注目すべきは、コンサルタント会社の新経営戦略立案作業の手法である。彼らは当該会社に乗り込んで、その会社で最も優秀な若手社員や現場をよく知る古参社員を集め、彼らから徹底的に情報収集する。改革へのキーワードは彼らが知っているからだ。(中略)
さて戦略より戦闘。Strategy(ストラテジー)よりもBattle(バトル)!
StrategyはよくテレビのCFなどに登場、かっこいい感じ。一方Battleはよくても軍曹の職責みないな、ちょいと獰猛なイメージ。少なくともクエイティブな感じがしない。しかし、リクルートは、創業以来ずっと「戦略より戦闘」なのだ。(中略)
山登りにたとえれば、麓であれこれ考える前にともかく走りだして三合目あたりで山全体(市場)を眺める。すると麓の時より少し景色がはっきり見えてくる。そこで初めてルート、いわば戦略を検討するというわけだ。装備の充実やルートの迂回変更もそこでなされる。これが「走りながら考える」であり「判らないことはお客様に聞け」であり、結果としての「戦略より戦闘」ということになる。(中略)
そう、リクルートが受け継いできたのは言葉の遊びのような「戦略より戦闘という戦略」であったと言える。(中略)
これを新たにホンモノの戦略たらしめるには3つの資質が要る。ひとつはユーザーからついに意見・希望として上がってこない「希求」を探し当てる能力。ふたつ目は、ともかく走りだす決断の力である。
そして、3つ目の資質は、資金力。従って夢を乗せて送り出す新規事業の船出というのは、実は現有主力事業で地道に利益を稼ぎ出している人達の頑張りによってなされる。
そういう意味では新規事業の担当者に、支えてくれている仲間すべてへの感謝心が大切なのだ。
そういう心の総和によって初めて「戦略より戦闘」は言葉としての完成度を高めるものなのだと思う。
『暗い奴は暗く生きろ』
- 著者
- 生嶋 誠士郎
- 出版社
- 新風舎/22世紀アート
- 出版年
- 2007年