幸運と伝説 生嶋 誠士郎

成功したどんな組織にも、勝ったどんなゲームにも“幸運” が介在している。リクルートの歴史でも、選択した方針の結果としての幸運は数え切れない。たとえ過誤があった時でも、そのあとに結果としての幸運 がある。

では運とは何か。ツキとは何か。判らない。全くつかみどころが無い。あえて言えば、〔やるべきこと は全力でやる〕そして〔祈る心を持つ〕ということか。

これでは明快な、科学的な、答えにはなっていないが・・・。それでも付言すれば、正しく他力本願であるこ と、即ち自分たちは他人によって生かされているという思いを強く持つことが、運の扉を開ける鍵のよ うな気がしてならない。

さて伝説もまた、組織の成長には欠かせない要素だ。伝説として語られる行いには何かしら非常識なとこ ろがあり、それが人を鼓舞する。その伝説を生んだ組織の一員であることが誇らしく思える心、それが貴重 なのだ。伝説を生む行為は、愚行や傍若無人や狂気と紙一重のところにあるものだけに、誰にでもなせる業 ではない。だからオトナになる過程で常識を身にまとった我ら凡俗には、それがまぶしい。

まぶしい・・・それが仏様の光背の輝きのごとくであれば、ご利益がないはずがない。

それにしても〔幸運と伝説〕は、結果として生ずるものなのか。それともしかるべき行いが前提なのか、 それは断じ難い領域である。

やはり、祈るのみか。お釈迦様の手の中で。

『暗い奴は暗く生きろ』

著者
生嶋 誠士郎
出版社
新風舎/22世紀アート
出版年
2007年