分配率の明確化 生嶋 誠士郎

創業期のリクルートがある程度の人材を確保し続けられた要因のひとつが、比較的に高い給与を支払うという実質だったと思う。そもそも会社で働くという契約が、仕事をして対価を受け取るという行為である以上、給与は高いほうがいいに決まっている。

(中略)

さて分配率の明確化ということでいえば、「給与は某指標の何%上の数字を目指す。賞与は利益の何%を社員還元する」と極めて明確で、全社員がそのことを知っていた。ここで重要なのは、明確な基準が提示されていたという事実のほうで、その各論では無い。(この算式を、筆者や周囲の大半は正確に覚えていない。当時から)

別のところで書いた〝組織の非搾取性〟は手柄のことであるのだが、ぺイの配分ということでも透明であること、経営者が搾取していそうな影が無いことが重要なのだ。そして何よりもそのこと(明確な分配率)が原動力となって稼ぎ出した業績によって、次の高い給与が支払われるという連鎖が、高い成長力を下支えしたのである。経営的な戯れ言をいえば、「払ってから働いてもらうか。働いてもらってから払うか」である。投資と留保を取り分けてのち、可能な限り社員に「先払い」すべし、は暴論か。

『暗い奴は暗く生きろ』

著者
生嶋 誠士郎
出版社
新風舎/22世紀アート
出版年
2007年