分不相応の連続線 生嶋 誠士郎

この言葉は完全に「生嶋感覚造語」である。1970年、中途入社2年目だった筆者が社内報「かもめ」から「リクルート発展の原動力」のようなタイトルの原稿依頼を受けて、もうひとつの言葉〝組織の非搾取性〟とともに思い至った言葉である。その後多用した。

ちょっとした縁で腰掛けのつもりで入社したこの会社がすでに色濃くもっていた〝成長への熱気〟をこの言葉で表現した。これを考えた時点ですでに「一宿一飯」のつもりのこの会社のとりこになっていたと言える。

(中略)

まず何よりも採用の意欲と決意が「分不相応」だった。当時の会社のレベルの分際をはるかに超えた人材を採用しようと全力をあげる。次にその人間を使ってまた次の人材をという展開だ。そしてそれが達成された時点で、次の「分不相応」を考える。挑む。達成する。また「分不相応」を立案する……という連続線なのである。

(中略)

こうしてリクルートはその創業当時から「分不相応の連続線」という貴重な体質を内包して歩みを始めたのである。

(中略)

ともあれ、多少の傲慢不遜のそしりを受けようとも「分不相応の連続線」はリクルートに伝承され続けるべき精神なのだろう。それこそが〝次代の人を呼ぶ〟という意味においても。

『暗い奴は暗く生きろ』

著者
生嶋 誠士郎
出版社
新風舎/22世紀アート
出版年
2007年