明確な目標は快感である 生嶋 誠士郎

去る2005年の年頭、リクルート社長の柏木斉さんから改めて年頭挨拶で常々の発言「grow」の具現化である数字目標が提示された。曰く「2010年にグループ売り上げ1兆円。連結利益2000億円」というものである。それに関連していくつかの施策方針が述べられているが、その言葉を強く記憶に留める社員は少なかろう。例えば「非連続の成長」という柏木さんの要請は一定の意味をこめてせっかく使っているのだが、その意味するところが職場で深く会話される機会は稀有であろうと思われる。

「数字が根源的な目標ではない」ことぐらいは新入社員でも理解しているが、一方で数字だけが目標として強くひとり歩きする組織風土である特徴をリクルートはもっている。

(中略)

その後関連会社のバブル借金返済モードの数年を経て、久しぶりに数字スローガンの目標が登場したわけだ。

単年度の目標ではないという違いはあるものの、この数字目標の発表と呼応するかのように「リクルートらしさが社内に戻ってきたような気がします」という幹部社員の声を聞く。数字を見ると、一気に一丸となって進む軍勢……。

(中略)

そこでタイトルに戻る。そう、明確な目標は「快感」である。数字を追いかけるという原初行為のなかで、工夫と努力とお互いの共感とを追いかけている。そして自己実現と感動も追いかけている。

そうなっていなくては「快感」はありえないはずだ。

(以下略)

『暗い奴は暗く生きろ』

著者
生嶋 誠士郎
出版社
新風舎/22世紀アート
出版年
2007年