多少の摩擦は構わん、常に震源地たれ 生嶋 誠士郎

これは営業部門の部長の一人として組織を任された最初の期(筆者三十歳代前半)に、部内に貼り出した言葉。自分で墨書して掲示した。言葉どおりの気分。若気を感じるメッセージ。次の期のスローガン発表の壇上では〝常に震源地たれ、多少の摩擦は構わん〟と前後を引っくり返しただけのものを掲示し「手抜きですが」と。それで笑いと拍手を受けた思い出。

さて、摩擦はなるべく避けたいのは我ら日本育ちの人情であろう。しかし摩擦がエネルギーを生むのも確かなこと。組織では順番に誰かが「前進のための摩擦」を創り出していくしかない。気力は要るが手を挙げて発言する。その機会を自らを鼓舞して創り出そう。

筆者は学生時代に、和田という友人から「生嶋よ、雄弁は銀、そして沈黙は金メッキ」と言われたことがあり、深く心に残った。

まことに我ら普通人の沈黙は、たいていが「金メッキ」なのである。

『暗い奴は暗く生きろ』

著者
生嶋 誠士郎
出版社
新風舎/22世紀アート
出版年
2007年